「収納は、扉の中にしまって終わり」。そんなふうに考えていると、家の中には活かしきれていない収納が残ります。

小屋裏、階段下、ウォークインクローゼット。どれも便利な収納スペースですが、ただ物を詰め込むだけだと、「どこに何があるか分からない」「暗くて使いにくい」「生活感が出やすい」と感じやすい場所でもあります。

そこで今回のテーマは、整理をがんばることよりも、見せ方を整えること。DIYの棚や間接照明を取り入れながら、収納を「しまう場所」から「空間をつくる要素」へと考えていきます。

魅せる収納の考え方

魅せる収納というと、「物を外に出して並べること」だと思われがちです。けれど実際には、すべてを見せようとすると、かえって落ち着かない空間になってしまいます。

大切なのは、収納を考える最初の段階で、見せるものと、隠すものを分けておくことです。まずは収納するものを次の3つに分けて考えてみてください。

見せる収納

形がきれいで、色や素材にまとまりがあり、日常的によく使うもの。

「見せる収納」に向いているのは、 置いてあること自体が、空間の雰囲気づくりにつながるものです。

たとえば、表紙のきれいな本や雑誌、お気に入りの器やマグカップ、観葉植物や小さなアート、写真立てなどが当てはまります。

キッチンなら、木製のカッティングボードやガラス瓶の調味料。玄関なら、革のトレーにまとめた鍵や腕時計もディスプレイとして成立します。

大切なのは、「使っている状態がきれいに見えるかどうか」。高価かどうかよりも、形がシンプルで、色数が抑えられているかがポイントになります。

半分見せる収納

よく使うけれど、そのまま並べると生活感が出やすいもの。

半分見せる収納は、使いやすさと見た目のバランスを取るための収納です。毎日使うけれど、視界にそのまま入れたくはない。そんなものが、ここに当てはまります。

たとえば、リビングのリモコン類や、毎日使う充電ケーブル。ひざ掛けやブランケット、読みかけの本。子どもが今よく遊んでいるおもちゃも半分見せる収納に向いています。

これらは、素材感のそろったかごや箱にまとめておくことで、存在感を抑えつつ、出し入れのしやすさを保てます。中身を完璧に整えなくても、外から見た印象が整っていれば十分です。

隠す収納

使う頻度が低く、数が増えやすく、見えないほうが気持ちが楽なもの。

隠す収納は、「見せないことで空間を整える」ための大切な選択です。 無理に見せようとすると、かえって散らかって見えてしまいます。

たとえば、取扱説明書や保証書、書類関係。予備の充電ケーブルや使っていないコード類。掃除道具や洗剤のストック、季節家電や季節飾りなども、隠す収納に向いています。

子どもの細かなおもちゃや、今は使っていないものも、見える場所に置くより、扉の中に定位置をつくるほうが整いやすくなります。

隠す収納は、手抜きではありません。見えないことで、暮らし全体を整えて見せるための工夫です。

魅せる収納を成立させるために

上の3つに分けて考えるだけで、「これはどこに置けばいいんだろう」という迷いはかなり減ります。さらに、棚をきれいに見せたいときは、次の3つを意識すると、印象が整いやすくなります。

• 余白を残す
  
• 高さに変化をつける
  
• 小物は3点ほどにまとめる
  

棚を埋め尽くすのではなく、「並べる」よりも「飾る」に近づける。数を減らし、同じ素材を少し増やす。この発想に切り替えることで、収納は片付けのための場所ではなく、暮らしの中で自然と目が向く“景色”になっていきます。

空間を活かすディスプレイ

階段下

①上下で役割を分ける

階段下は奥行きが深くなりやすいため、前後に物を重ねると使いづらくなります。そこでおすすめなのが、上下で役割を分ける配置です。

目線の高さには、本や写真など、動かす必要のないものを置きます。足元には、キャスター付きの引き出しや箱を使って、日用品やストック類をまとめます。こうしておくと、飾りを動かさずに使えるため、日々の出し入れも負担になりません。

② 左右で役割を分ける

階段下に横幅がある場合は、「見せる棚」と「しまう収納」を左右で分けて考えます。

見せる側には、本やグリーン、小さなオブジェなど、基本的に動かさないものを置きます。

反対側の「しまう収納」には、日用品やストック類を引き出しや箱にまとめて収めます。収納を扉付きや引き出し式にしておけば、中身が多少雑でも、空間全体の印象は崩れません。

階段下をひとまとめの収納として考えるのではなく、「二つの小さな空間が並んでいる」と捉える。この考え方に変えるだけで、階段下は見た目と使いやすさを両立しやすくなります。

小屋裏

小屋裏は、面積があるぶん「とにかくしまえる場所」として使われがちです。ただ、すべて収納にしてしまうと、どこを見ても箱や荷物が並び、空間としての魅力は感じにくくなります。

そこで意識したいのが、小屋裏の中に、あらかじめ「魅せる面」をつくることです。おすすめなのは、壁の一面だけを使って棚を設ける配置。本や趣味の道具、作品などを並べることで、小屋裏に「視線が向かう場所」が生まれます。

一方で、季節物や思い出の品など、頻繁に出し入れしないものは、見せる必要はありません。こうしたものは、箱にまとめて、見せる棚とは別の場所に収めておくほうが管理しやすくなります。

小屋裏を「たくさんしまう場所」ではなく、一部だけでも目が向くスペースとして残しておく。それだけで、小屋裏は収納でありながら、魅せる空間として成立しやすくなります。

ウォークインクローゼット

ウォークインクローゼットは、収納量が増えるほど、一着一着はきれいでも、全体として雑多に見えやすい場所です。ここで意識したいのは、服そのものより、並び方を見ることです。

まず効果が出やすいのが、ハンガーの形と色をそろえることです。それだけで、同じ量の服でも、印象は大きく変わります。

次に意識したいのが、服の並び方です。「色のグラデーション」か「丈の長さ」のどちらかそろえると、視線が自然に流れ、散らかった印象を抑えやすくなります。

棚や足元の収納では、すべてを見せようとしないことがポイントです。バッグや小物は、トレーや箱にまとめて置く。引き出しや扉付き収納と組み合わせて、見せる場所と隠す場所をはっきり分けると、管理もしやすくなります。

階段下や小屋裏、ウォークインクローゼットも、魅せるディスプレイは特別な工夫より、見せる場所を決めることから始まります。 視線が整うだけで、収納は空間の一部として自然に馴染んでいくでしょう。

照明×自然素材の演出

魅せる収納やディスプレイは、棚を整えただけで完成、というものではありません。同じ並びでも、光の当たり方が変わるだけで見え方はずいぶん変わってきます。

特に、木の棚やかご、布ものといった自然素材は、光を受けたときに良さが出やすい素材です。強く照らさなくても、やさしい光が添えられるだけで、色合いや質感がふわっと浮かび上がり、収納全体が落ち着いた雰囲気になります。

たとえば、壁や天井に反射した光が、棚まわりを包むように当たっていると、自然素材はやわらかく見えます。反対に、白く強い光だけが当たると、素材の風合いよりも形ばかりが目に入り、少し硬い印象になりがちです。

照明を考えるときは、「どこを明るくするか」よりも、「どんな雰囲気にしたいか」を思い浮かべてみてください。照明を少し動かすだけでも印象は変わるので、普段よく目に入る棚まわりから試してみるのがおすすめです。

DIY棚の工夫

魅せる収納を考えていると、「ここに棚が一段あったらいいのに」と感じる場面は、意外と多いものです。DIY棚は、そんなときに取り入れやすく、見せ方や使い方を自分の暮らしに合わせて調整できる点が魅力です。

ただし、DIY棚で大切なのは、たくさんつくることではありません。まず意識したいのは、置く場所を選ぶことです。「ここに一段あったら使いやすそう」と思える場所を、一つだけ決める。そこから始めるだけで、失敗はぐっと減ります。

棚の奥行きは、深くしすぎないのがコツです。奥行きがありすぎると、物を重ねやすくなり、せっかくの棚が置き場になってしまいます。本や小物を並べるなら、一列置けるくらいの浅さが、見た目も整いやすくなります。

素材選びも、DIY棚の印象を左右します。すでに部屋にある床や家具と、色味や質感を少しだけ寄せるのがポイントです。まったく同じでなくても、「なんとなく近い」だけで、棚は空間に馴染みやすくなります。

また、壁に棚を付ける場合は、しっかり固定できる位置かどうかを、あらかじめ確認しておくと安心です。

DIY棚は、使いながら少しずつ整えていく過程が楽しいところです。置くものを入れ替えたり、照明を足したりしながら、「今の暮らしにちょうどいい形」に近づけていく。その積み重ねが、棚を単なる収納ではなく、暮らしの一部として育ててくれます。

まとめ｜収納を、暮らしの景色として考える

収納は、ただ物をしまうための場所ではありません。見せる場所を決め、光を整え、素材の表情を活かす。それだけで、収納は暮らしの風景として感じられるようになるでしょう。

階段下や小屋裏、ウォークインクローゼットも、整理をがんばるより、「どこを見せるか」「どこを隠すか」を決めるだけで、使いやすさも見た目も整いやすくなります。

住広ホームのモデルハウスでは、収納の配置や見せ方、照明と素材がつくる空間の雰囲気を、実際の暮らしに近い形で体感していただけます。

写真だけでは伝わりにくい空間の心地よさを、ぜひ現地で確かめてみてください。

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